ヒメユリ

百合小説サークル「ヒメユリ*ひメユり」です。主に活動と百合について語ります。
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オリジナル短編百合小説「空」

久々にオリジナル書いたーって感じ?
GirlsLoveFestival7に持って行く小説とは
ちょっと雰囲気が違いますが、
でも元々の作風はこんな感じです。

【恋はひそかに】には未収録なのでサンプルにもならないですが、
参考までに、読んでいただければと思います。

(pixivにも一応同じものを上げてます)

追記からどうぞ。



【空】 弥家比奈

 その日私達はとある田舎のコンビニエンスストアーの前にいた。
 それはそれは寒い日で、制服の上にセーターやらフリースやら着込んで、それでまだジャケットを羽織る始末。私は、はち切れんばかりの着膨れを起こしていた。
 夏の暑さには強いつもりだけど、冬の寒さにはめっぽう弱い。それでもって、温かい場所から動く事をしたくなくなるので、冬眠熊の様に布団にくるまってぬくぬくとしているのがいつものだ。
 「さーむい……」
 「うー確かに」
 隣にいる人は、細めのジーンズにダウンをかっこ良く着こなしている。のに、黒淵眼鏡だ。しかもど近眼なのか、レンズも分厚いアンバランス。
 「みーちゃんが連れて来たんだからなんとかしてよ」
 「そーだねぇ……あんまり何も考えてなかったから」
 ちょっとずれた眼鏡から覗く大きくて綺麗な目。相変わらずのマイペースだけれど、私はこの人の、この目に惹かれてここにいる。
 「綾音(あやね)はどうしたい? どこか行きたいところない?」
 「うーん、でも街中はやばいでしょ?」
 私がそう言うと、彼女はうーんと唸って、それから確かに綾音は制服だもんね、まずいか。と言った。
 「いや、いや、私よりもみーちゃん的に、だよ?」
 「そう?」
 「そうだよ」
 本日は平日也。学校は絶賛授業中で、確かに私が補導されちゃったりすると、やばいかもしれないけれど、それよりも彼女が何者かってのがバレたときの方がもっとやばい。
 みーちゃんなんて気安く呼んでるけど、彼女はちょうど私くらいの年齢の子なら知らない人なんていないんじゃないかと思うような存在の人。
 「今日は基礎メイクだけだし、眼鏡かけてるし、バレないでしょ」
 なんて、ホントにマイペースに言って退ける彼女は、此乃原美波(このはら みなみ)さん。人気バンドのギタリストで、私のクラスにも、沢山彼女のファンがいる。
 で、なんで私が彼女と知り合いなのかと言うと、至極単純な理由で、彼女は私が住むマンションの隣に一人で住んでいて、何となく一度話をしたら、不思議と息があったようで、それから何度も部屋に遊びに行ったり来たりする様になって、今に至ると。
 ファンの人からしてみれば羨ましくて、仕方の無い事かもしれないけれど、私にとっては隣の気のいいお姉さんなのだ。だからミーハーな気持ちでここにいるなんて事は、これっぽちもない。
 実際、彼女が楽器を弾いている姿を見た事も、彼女が何かにつけて差し出す曲のデータやらも殆ど聞いた事がない。
 「しかし、寒いなあ」
 彼女は呑気に空を見上げながらそう呟いた。
 「当たり前だよー、雪花(ゆきばな)が散ってるんだよ、雪花!」
 舞い上がる風に時折白い花びらの様な雪が散る。本来なら大人もときめくその光景だけれど、今はそれが寒さを余計に醸し出す。
 「雪花(せっか)の事をゆきばなって言ってる辺りが、綾音らしいよね」
 私の抗議も気にしないで、彼女は大きな目を細くしてクスクスと笑っている。
 「らしいってどういう事ぉ」
 「そのまま、だよ」
 むくれた顔で再び抗議すると、タイヤ止めに座っていた彼女は、よいしょっと立ち上がり、私の頭をポンポンと叩く。
 それから、やっと移動する気になったのか、バイクに跨がり、私にヘルメットをよこす。
 「そいじゃ、もうちょっとらしいところにでも行きますか」
 フルフェイスのヘルメットだから、モゴモゴとくぐもった声に聞こえたけど、私は、うんと頷いて、渡されたヘルメットをかぶり、再び彼女を後ろからぎゅっと抱きしめる。
 「しっかりつかまんなさいよ、ちょっと飛ばすからさ」
 そう聞こえたから、彼女の腰にまわした腕に、もっとぎゅっと力を入れる。彼女のジャケットと私のジャケットがキュッと擦れて、ソプラノで鳴いた。
 「じゃ、出発」
 彼女の声でエンジンがドルンと唸り、ガタガタと独特の振動を起こす。
 何度も乗っているけど、やっぱり怖い。怖いからドキドキする。それがいつの間にか、彼女へのドキドキへ変わる。
 えっと……こういうのをなんて言うんだっけ?
 ああ、あれだ。吊り橋効果。吊り橋を渡る怖さに対するドキドキを、その時一緒にいる人へのドキドキと勘違いしちゃうって話。でも、私のは正真正銘、彼女へのドキドキ。


 「お尻痛い」
 「どれ、お姉さんがなでてあげよう」
 「いいです、変態」
 ずいぶんと南下したと思ったら、今度はもう、本当にどうしようもないくらい何もない場所に連れてこられた。
 今、私たちの目の前に広がるのは、不機嫌な空の色にそのまま続く、真冬独特の灰色の海だけだ。
 「ね、なんで海なの? 寒いって言ったのになんで海なの?」
 「うーん、好きだから」
 相変わらず、彼女は涼しい顔でさらりとそう言ってしまう。
 「寒い寒い冬の海が?」
 「そう、寒い寒い冬の海、ね」
 またクスクスと笑いながら彼女は、私の言葉をオウム返しした。
 「なにがおかしいの」
 「おかしいんじゃないよ、だから、綾音らしいんだよそう言う感性っていうか、今の私にはもう絶対真似出来ないような」
 「それってほめてる?」
 「そのつもり」
 彼女はそう言うと、私の手を引いて、誰もいない砂浜へと歩き始める。
 靴の中に砂が入るのを気にしたけど、つないだ手の方が余計に気になって、実は靴の砂どころじゃなかった。
 「波が見たくてさ」
 砂浜に白い泡を作りながら、寄せて返すその波のさきっちょを見下ろしながら彼女はぽつりと呟いた。そんな彼女の横顔はおそろしくきれいで、ひとまわりも違う私にとっては、絶対に手の届かない場所にいる人なんだ、という事を痛感させるには、十分な迫力だった。
 そんな彼女に向かって、私が今かけられる言葉なんてないのも分かっていたし、そんな勇気もなかった。
 朝から何となく彼女の様子がおかしいのだって、本当は分かっていた。そんな彼女が心配で、たまたまガレージで出会った時に、なんちゃって的に、どこかに行こうなんて誘って来た彼女に、私は二の返事で乗っかった。
 相変わらず、時折強い風が吹いてその度にひらひらと雪花が舞い散る。海はゴオオと低い音で唸りを立てて忙しなく波を私たちの足下まで運んでくる。
 そんなお天気だから、ここはどこまで行っても灰色の世界。そこにぽつんと私と彼女のふたりだけが存在している様な気持ちになる。
 「みーちゃんとふたりぼっちになった気分」
 「え?」
 ぽつりと呟いた私の言葉に、彼女は相当驚いたようで、大きな目を丸くして、こちらを見下ろした。
 「だってさ、空も、海も全部灰色だし、どこまで行っても何にもないもん」
 ぽかんとした顔で私を見ているのが面白くて、さらに続けた。
 「確かに後ろを振り返ると今来た道があって、みーちゃんのバイクがあって、砂浜には私たちの足跡がしっかり着いてるからちゃんとさ、現実があるんだけど、でもこっち側をみたら、ほら、この先にはわたしとみーちゃんしか存在しない世界が広がってるみたいじゃない?」
 「……確かに」
 確かに、と言った彼女はそのまま時間が止まった様に私の顔を見つめた。その目に私が映っているのかどうなのかは定かではないけれど、眼鏡の奥の彼女の瞳は一切揺らぐ事なく私の目をとらえて離さなかった。
 「みーちゃん?」
 「綾音さー、今いくつだっけ?」
 「えー? 16だけど……あー! 中二発言とか思ったでしょ」
 しっかりとつながれていた手を振りほどいて、私は彼女の腕に軽くパンチを食らわせた。
 「イテテ、中二とか思ってナイナイ」
 彼女は大げさに痛がりながら腕を押さえて笑う。でも頭の中メルヘン乙女だと思われたのは絶対。だってめちゃくちゃ笑うの我慢して、口元がムニムニしてる。
 「絶対に思ってるんだからっ」
 そう言うと、彼女は口をへの事に結んでううん、と首を横に振る。それでも許してあげないと、私は彼女に背を向けて波が立つ砂浜を駆け出した。
 「ちょ、綾音!」
 背中で彼女が叫ぶ声が聞こえたけど、なんだか楽しくなっちゃって、私はどんどんスピードを上げた。
 真冬の海辺で、しかも雪花だって散ってるクソ寒い最中に、なんで全力疾走してるのかよくわかんないけど、それでも私は走り続けた。
 暗い雰囲気から逃げ出したかったのかもしれない。それとも、朝から頭の隅にこびりついて離れない嫌な予感に背を向けたかったからかもしれない。
 とにかく走って走って。
 「ちょ、私そんなに足早くないんだからさー!!」
 彼女の困り果てた声が聞こえたところで、私はやっとスピードを緩めて、それから呼吸を整える様に歩いた。
 のどの奥が心なしか鉄の味がする。
 「つ、かまえ、たっ」
 後ろからガバッと羽交い締めにされて、私はまだ整いきってない呼吸を肩でしながらその場に彼女と崩れ落ちた。
 「はあっはあっ」
 「はーはー」
 ふたりの息づかいがすぐ側にあって、今までにない程彼女の顔が近かった。すこしずれ落ちた眼鏡が、激しく呼吸する唇が、普段の彼女からは想像出来ないくらい艶やかで、経験値が低い私がそれにダウンしてしまうなんて、あっという間の事だった。
 私はゆっくりと手を伸ばし、彼女の眼鏡を外した。長いまつげによほどしんどかったのか、涙の粒が揺れていた。それが大きな目に反射してウルウルとして、とても綺麗だった。
 「きれい……」
 そう思わず呟くと、彼女は私を、まるで自分の一部かの様にたぐり寄せこれ以上にないくらい抱きしめた。
 「みー……」
 私に最後まで言わせないで、彼女は器用に私の唇に自分の唇をあわせた。
 他人の体温がこんなにも熱いなんて知らなかった。十分過ぎるくらいドキドキしていた私の、ファーストキスの感想は意外にもそんなもんだった。
 
 彼女の眼鏡をかけてみると、完全にそれは伊達である事が分かった。
 「みーちゃんは目悪くないんだね」
 「うん、伊達だよ」
 お互いに砂だらけになる事も気にしないで、砂浜に寝転がっていた。
 眼鏡をかけて空を見ると、雪花がレンズの上にフワリと落ちてくる。それがなんとも素敵な光景で、彼女とキスをするなんて夢にも思わなかったもんだから、余計に今のこれは夢であるのかもしれないなんて思う。
 「もし、何もない、ふたりだけの世界になったら、私はその相手が綾音である限り生きてけるよ」
 「……なんか『ぷろぽーず』みたい」
 「プロポーズだよ」
 隣からぽつりと低い声で聞こえたその言葉に、私は一時(いっとき)、何の事か分からなくなりかけたけれど、鼻の上に落ちた冷たい雪が、やはりそれはそう言う意味だ、と教えてくれた。
 「今週の週末にね、私ロンドンに行くんだよ」
 「は? 急になんで?」
 さすがにガバリと私は飛び起きて彼女を覗き込んだ。すると、彼女は私の顔を見て、ホントに綾音は私たちのバンドに興味ないんだなー、なんて笑った。
 「解散したよ、私たち」
 「……ごめん」
 知らなかった。申し訳ないというか、本当に私は彼女の仕事の部分には興味がなかった。だから、当然事情も知る分けない。
 「スタジオミュージシャンでも、しようかと思ってたんだけどさ、アマチュアの頃から良くしてくれてた人が、ロンドンでプロデュースしてるバンドのギターに穴があいたからどうかってさ」
 「夢? だった?」
 「そーだねぇ、まー一度くらいは外でやってみたいよね、ミュージシャンとしてはさ」
 「ごめん、わかんない」
 「だろうね」
 さっきまでのラブラブムードは一転して、なんだか険悪な雰囲気になってしまった。
 でも、そんな事を全く気にしてないのか、彼女はまた、いつもの様ににへらっと笑い、
 「だからさ、プロポーズしてみた」
 と、言って退けた。
 「どうしてそこに繋がるの」
 「えー、だから、一緒に連れて行きたいとか思った……」
 「何を?」
 「綾音を」
 「どこへ?」
 「ロンドンへ」
 「バカ?」
 「んー、そう?」
 短いラリーを制したのは彼女の方だった。
 「私も、みーちゃんも女の子でしょ? 結婚出来ないでしょ?」
 「あ、向こうは出来るみたいだよ? 結婚ていうか、パートナー?」
 わ、もう、ああいえばこういう状態に入っている。ていうか、そう言うのを調べ済みとかどこまで本気なのかよくわからない。
 あまりの衝撃にわーっとなって、頭を抱えていると、そこをぎゅっと抱きしめられた。
 「初めてあった日の夜、綾音の声が耳からずっと離れなかった、で、次の日、それは好きなんだってことに気がついた」
 耳元で、ゆっくりと昔話を語る様に、彼女は話を始めた。
 「曲を描く時もいつもギターの音じゃなくて綾音の声が耳の奥に響いて、綾音が鼻歌歌ってるみたいに聞こえるの、そしたらだんだん、綾音に向けての曲ばっかになっちゃって」
 恥ずかしいセリフをポンポンと驚く程スマートに出してくる。多分、他の人が聞いているとかっこわるいかもしれないけど、今の私には十分すぎるぐらい心にドシンと来る。
 「綾音はちっとも曲聞いてくれないからなあ……アハハ」
 「ごめんなさい」
 とんでもなく、私悪い人みたいだし。
 「いいの、いつか綾音がちゃんと聞いてくれるまで、綾音の心に響くまで書き続けようってね、逆にやる気になってた」
 「……プラス思考だね」
 「うん、そうでもしないとやってけないよ、アーティストって奴は」
 うそ、本当はいつもどこか影を背負って、身を削って曲を描いてた。それが分かってたから、私は彼女の聞くのが嫌だった。
 「だからね、ロンドン行き、綾音を本当に連れて行こうかと思ってた、じゃないと、ちょっと不安で」
 彼女は、私の肩におでこをポンとのせてフーとため息をついた。
 それについて、私はなにも言えなかった。だって言えるはずがない。
 私はまだ、16歳っていう、世間も何も知らないただの子ども。自分の特徴だって、自分に何が出来るのかだってまだ分からない、そう、どこで食べても同じ味のお子様ランチのようだ。
 「でもま、連れて行かなくてもいいかなって今日思った」
 「……なんで?」
 なんだか妙に残念な気持ちと、ほっとした気持ちが背中を走り抜けて行った。
 「ちゃんとマーキング出来た」
 「ま、マーキングぅ!?」
 言いたい事は分かるけど、そのアーティストらしからぬ表現の下品さに、ムッとして彼女をにらんだ。すると、ひょいっとかけていた眼鏡を奪われ、驚く暇も与えられないで、もう一度キスされた。
 今度はゆっくり長く、まるでそれぞれのすべての情報を交換する様に、歯がぶつかっても、鼻がぶつかってもずっとずっと、お互いの気が済むまで唇をあわせた。
 
 「砂だらけ」
 現実に戻ると、やっぱり寒いし、おまけに服も髪もジャリジャリとして気持ち悪い。多分、彼女も同じ。だけど、ふたりはビッタリとくっついて、走って来た砂浜をゆっくりとバイクの方へと歩く。
 「シャワーを浴びればいいよ」
 彼女のその言葉に体がピクリと反応する。
 私だって多感なお年頃の16歳なんだから、そりゃ、ただのシャワーなんて単語から、あっさりとあらぬ想像まで出来てしまう。でも、これは今日だけの夢の様な話なんだったら、それに便乗しちゃって、そういう風になっちゃうのもいいかもなんて、どこかで思っていたりする。
 「……マーキングの続き?」
 「え? ……アハハハ、ほんと、綾音は可愛い」
 大笑いしながら、彼女は私の頭をくしゃりとなでた。
 背の高い彼女越しに見る空は、やっぱりどこか不機嫌な色をしていた。

 週末、彼女はロンドンへと旅立った。
 もちろん、私はいつもの場所にいる。
 ただ、彼女から、彼女の使っていた部屋の鍵を貰った。日本にいる時はここに帰ってくるそうで、ほとんど中もそのままにしてある。だから私はちょこちょことやって来ては、彼女の部屋で彼女が毎日見ていた風景を見ている。



 「――ン♪」

 雪花が桜の花びらに変わり、空に浮かぶ雲が大きな固まりになって、それから天が高くなる。鱗(うろこ)雲を見つけると、そろそろまた、あの不機嫌な空がやってくる季節なんだと、思い出す。
 彼女越しに見た、あの不機嫌な色をした空が。

 「ラ――♪」
 
 今の私のお気に入りは、彼女の部屋のベランダで、携帯音楽プレイヤーに入れた沢山の曲にあわせてハミングをする事。
 私の歌う彼女の曲が、遠くにいる彼女の元に届くように。


終わり。 

 
 
 
 
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Author:弥家比奈
2006/10/26/Start
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