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オリジナル短編百合小説「銀河鉄道の夜 貸出し中」

おぉ、大した校正もしてないから、誤字脱字ばかりかもww
とりあえず、上げます。

「銀河鉄道の夜」を読んでから見た方がよさそうですよw

「銀河鉄道の夜 貸し出し中」

追記からどうぞ



銀河鉄道の夜 貸し出し中


  「お疲れ様でーす」
  「おつかれー!」

 知り合いの紹介ではじめたバイト。とても楽しい職場なんだけど、シフトの関係で帰りが遅くなっちゃうことが多くて。だからやめちゃおぅかな…なんて思ってた。

  「あ、玲奈(れな)ちゃんっ」
  「あ、まいちゃんっ」

 このバイトを始めてから仲良くなった、バイト仲間。1つ下の北原(きたはら)まいちゃん。今日はピンチヒッターで出勤していた。なんだかすごく楽しそうに、こちらにやってくる。

  「なぁにぃ?」
  「見てっ」
  「んー?」

 手渡された小さなアルバムをゆっくりめくると楽しげに海辺でバーベキューをしている写真が数枚並んでいた。

  「へぇっ!いいなぁ~。これ、どうしたの?」
  「ゼミ仲間でさ、バーべキューしたの。そんときの写真」
  「そっかー。楽しそうっ。いいなぁ~」

 私がそう答えると彼女はニヤニヤと笑いながら一つの写真を指差して「ね、これ、みて!」といった。彼女の指の先を目で追ってみるとそこには一人、ぽつんと困ったような顔をしたキレーな顔立ちの男の子?が映っていた。

  「クスッ…かわいいねぇ」
  「でしょ?…で、どうおもう?」
  「ん?なにが?」
  「かっこいいとかぁ、きれーだとかぁ」

 まいちゃんの彼氏?物凄く得意げにそういってくるもんだから、思わずそういいかけそうになったけど…。

  「うん、かっこいい」
  「あー!やっぱりっ!そっかそっかー。やっぱこっちにはもてるんだなぁよしこは…」
  「よしこ?」

 まいちゃんは私の反応を見て一度がははと笑い、そう、よしこ。女の子だよ?と教えてくれた。
…そっか…。女の子なんだぁ。言われてみれば、顔立ちきれい過ぎるものね。…乱れた前髪でかくれてて、少ししか見えないけど、確かにその唇は女の子の唇のようだった。
  こんなにきれいな子。いるもんなんだなぁと、感心しながら写真を見つめていると、まいちゃんは私の勝ちだわ!とガッツポーズをした。

  「?なに?」
  「美奈(みな)とさ、駅前のパフェ、かけてたんだよね、玲奈ちゃんがどっちに見るか」
  「えぇ?そうなの?…そっか。じゃ、まいちゃんは私が男と判断する方にかけたんだ」
  「そう!ごめんねー」
  「いや、別にかまわないけどね」

 そういって私はもう一度その写真の彼女をチラッと見て、それからアルバムを閉じてまいちゃんに手渡した。


 *  *  *


 いつものように駅の階段を上り、改札をくぐっていつも乗る車両に歩いていった。ボックス席に座って、お気に入りの銀河鉄道の夜を読む。それが私の日課。いつも比較的空いてるボックス席に向かうと今日は先客がいた。その人はうつむいて音楽を聴いているのか、近くからシャカシャカと音が小さく漏れていた。たぶん、聞いた事のある、流行の歌。その人の隣席には荷物がおいてあった…。いつもなら声はかけないんだけど、今日はなんだか人が多くて、ちょっと疲れていたせいもあって近づき、声をかけようとした。

  「あ、…」

 手前で驚いて、私は一度足を止めた。そのうつむいていた人はついさっき、まいちゃんと話をしていた『よしこ』さん。…。顔に似合わない古風な名前。すこし躊躇したけど、やっぱり思い切って声をかけてみることにした。なんていうか、すごい偶然に妙にドキドキしてしまったから。

 偶然は3度起こるとそれは必然になる。

  なにかの本だか歌詞だかで読んだ事がある。ここで声をかけたら、この先の運命が変わるのかな。なんだか妙な期待感をこめてスイマセンと小さく声をかけた。彼女はまったくき気付くそぶりもなく、かわらずそっぽ向いて音楽を聴いているようだった。しかたないのでそっと手をのばして肩を叩いた 。…いつもならこんなことしないのに。

  「えっ?」

 彼女がとっさに振り向いた。そのときの顔に私の中で大きく波打った。真っ白な肌に驚くくらい美しい瞳。茶色く、やわらかそうな前髪が、写真の時よりも伸びてあごのラインまであった。

 きれい…。

 女の子相手にこんな風にドキドキしちゃう何て…。わたしはなるべく平然を装って、ごめんなさい、となりいいですか?と聞いた。その言葉に彼女は慌ててじぶんの荷物を乱暴につかんで、どかっと膝の上においた。そして、小さな声で「ごめんなさい。どうぞ」とだけいってくれた。なんてぶっきらぼうなんだろう…。
 そう思ったけど、でもまいちゃんに見せてもらったあの写真を思い出すと、なんだかそれでも『かわいらしいな』なんておもってしまう。クスクスと笑ってしまいそうなのをこらえて、ありがとうございますとゆっくり腰を下ろしながら言った。
  本を読みながらちらっとうつむいている彼女を見ると、どうやらこちらの様子を伺っているように思えた。この本に興味あるのかな?なんて思っていると急にカバンの底に入れておいたケータイが振動したので、あわててカバンをさぐってケータイを取った。

  「あっ」

 とたんに膝の上にあった本が床に落ちてしまった。

  「あ、すいませんっありがとうございます」

 無言ですばやく彼女がそれをひろって私に渡してくれた。笑顔でお礼をいうとなんとなく彼女の表情がふにゃりと砕けた。そんな表情をみているとなんとなく、聞きたくなった。

  「あの…」
  「え?」
  「気になります?」
  「は?」

 わたしの問いかけに彼女は驚いたように目をまるくする。頬が心なしかピンクに染まっていた。
うわー。照れ屋なんだ…。ほんとに可愛いかも。

  「本」
  「え?」
  「貸してあげましょうか?」

 私は繋がるはずのない未来にちょっと賭けをしてみようと思った。また、もう一度会えるかなんてわからない。今度会えたら偶然が必然に近づく。神様。私達のこの先をあなたはどうしますか?
わたしは困る彼女に望をたくして、本当は一駅早かったけど、なんだか恥ずかしくなっちゃって、電車を降りた。


 *  *  *


  「ねー!玲奈ちゃんっお願いがあるんだけどっ!」

 あの人に本を託してから2週間が過ぎようとしていた。結局あれからまったく会うことはなかった。そんなある日、バイトが終わったまいちゃんが私のところまで来てパンッと手を合わせた。

  「玲奈ちゃん今度の花火大会の日、バイト終わってから時間ない?」
  「ん?…その日ならバイト6時までだから7時にはいけるよ?」
  「よーかった!実はさぁ…」

 まいちゃんの頼みごと。なんとなーく想像はついていたけど、やっぱりコンパのお誘い。わたし、あんまり好きじゃないんだけどね。コンパとか。だけど、暇だって言っちゃったし。それにまいちゃんの一言でやけに乗り気になってしまった。

  「あの、この間の写真の子。よしこもくるんだよねっ!」

 彼女に会えるならま、行ってもいいかな?と…。偶然にはならないかもしれないけど、もう一度会えるなら。私はそんな気持ちで快くうなずいた。


 *  *  *


  「おつかれさまでしたー!」
  「おつかれーっ…お?今日は玲奈ちゃんデート?」
  「えーっ違いますぅ!」
  「そう?なんかやけに顔が明るいからさっま、気をつけてねー!」
  「もぅ!!店長っ」

 店長の保田さんにからかわれつつも、デートっていう響きに妙に嬉しくなっちゃってニヤニヤしちゃう。こんなとこ、友達の紀美(きみ)ちゃんとかに見られると絶対キモイってばっさりやられちゃう。
 ちらっと腕時計を見るともう7時前だった。遅れるからとは言ってあったけど、これはちょっとヤバイ。私は急いでホームを駆け、電車に飛び乗った。花火大会の会場は、私の家の方面だから同じ電車。で、わかっててやっちゃういつもの癖。


  あの人を探す。


  でもいる分けない。わかってんだけどな…だって今日はまいちゃんとかと一緒に、先に会場にいってるはずだもん。…男の子はちょっとうっとうしいけど、でも彼女に会えるなら。私は席に座りもしないでドア越しにじっとそとの景色を見ていた。
 いつも降りる駅より3つ手前の駅で私は降りて、ドキドキする自分の気持ちを少し落ち着けようと人の波が終わるまでベンチに座っていた。
  もうすでに、いい感じの雰囲気とかになってたらどうしよう。…まいちゃんとかいるけど、やっぱ彼女がダントツできれいだよね。頭の中でいろんな事を考えてしまう。なんだかすこし怖くなってきた。

  「もぅっ」

 わたしは考え始めたらキリがないと思って立ち上がり、改札を出た。

  「あっ」

 うそっ!?声の方を見ると、ここにいるはずもないその人『よしこ』サンが私の目の前にいた。彼女も驚いた表情でこちらを見ていた。しばらくおいて、なんとなく頭を下げた。それで、ゆっくりと近づいた。

  「この間は、どうも」
  「あ、いいえ。なんか押し付けちゃったみたいだし」
  「いやぁ!そんな事ないです!すっごく助かりました」
  「?」

 なんで?あんな本で何が助かったんだろう…。

  「あぁ、れ、レポート。…レポートの参考に」
  「へー。そうなんだぁ。…なんか、嬉しいな」

 私が変な顔をしたのか、彼女はしどろもどろしながら、そう答えてくれた。…私はちゃんと読んでくれた事にちょっと感動しちゃう。
  でも、彼女はどことなく落ち着きがなくてハンカチでコソコソ額を拭いたりなんかしてる。とりあえず、彼女はこちらの事をあまり知らないはずだから、私はすこしはぐらかして、どうして彼女がここにいるのか聞いてみた。

  「…花火大会、いかないの?」
  「あ、いや…。…実は…コンパ抜け出してきちゃったトコなんです」
  「え、そーなの?…なんだ。…実は私はこれからコンパに参加の予定なんだけど…」
  「え?」

 ぬ、ぬけだした?まだ始まって15分くらいなんだけど…花火。彼女をチラッと見るとなんだかさっきより表情が砕けていたので、私はとっさに彼女に言ってみた。

  「でも、やめよっかな」
  「え?なんで?」

 彼女は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。どうやら私が一緒に合コンする予定だった人
だとはまったく思っていないらしい。

  「うん…人数あわせだし、なんとなく今から入りにくいじゃない?」
  「まぁ…確かに」

 適当に理由をつけてみた。けど、ホントは一番の理由は、ここに貴方がいるから…。…なーんていえないけど。ぼうっと彼女が私をみていたから、思い切って私は彼女の腕をつかんだ。。

  「へっ?」
  「いこっ」
  「ど、どこに?」
  「花火。みにいこっ」

 無抵抗な彼女をぐいぐいと引っ張って私は駆け出した。

  「会場じゃなくて、結構キレーに見えるトコがあるのっ」

 キレーな星空と、花火大会っていうなんだか特別な日に、彼女といることに妙に気分が高まって楽しくて仕方がなかった。

 昔、友達とよく見に来ていた丘の上まで一気に駆ける。いつのまにか彼女も同じペースで横に並んで走ってた。そのときの顔は今までに見たことのないくらい無邪気で、可愛くて、愛しいとさえ思った。

  「はぁっはぁっはぁっ」

 彼女の腕を離して芝生に座った。

  「走ったねぇ」
  「うん」

 私は呼吸を整えながらハンカチで額をぬぐった。彼女は呼吸が荒いままゴロンと芝生の上に寝転んだ。

  「…。きれーよね」
  「きれー…ですね」

 いつも見る花火よりももっともっと素敵に見えた。空にちりばめられた星も、ちょっと蒸し暑い空気も次々にあがる花火もみんな、みんな大切なものに見えた。私は彼女を真似て彼女のとなりにごろんと横になった。距離がぐっと近くなった気がして心臓が大きく脈打った。

  「あの…今日は」
  「え?」
  「今日は持ってないんですよ、本。…せっかく会えたのに」
  「あぁ。いいよ、また今度で」
  「でも、次、いつ会えるかわからないじゃないですか」

 急にそんなことを言った彼女が、妙にむきになって話しかけるもんだから、私はおかしくなって、次に会う約束をしようか?と切り出した。
  彼女はひどく申し訳なさそうな顔をしていて、遠慮がちにいいんですか?と聞いてきた。嫌じゃなければ。と返すとすぐに「いじゃなないですっ」と、返事が返ってきた。
  偶然が2回。…後一回で私達が出会う事は必然だった。そういうことになる。でもなんだか2回だけでも十分運命を感じてしまうような気がした。うん。きっとそう。あの時、まいちゃんに写真を見せられた時から私はもう、彼女の事を…。

  「あ、そうだ。まだ自己紹介もしてなかったよね?」

 不意に彼女の名前が顔に似合わない「よしこ」だということをおもいだしたので、そう切り出してみた。

  「あぁ、そうだ。えぇっとあたしは吉河です。吉河麻美(よしかわあさみ)」

 あれ?よしこじゃないの??…麻美かぁ~。うん、それなら納得できる。

  「へー、麻美チャンって言うのかぁ、かわいいなぁ」
  「いやぁ、あんまし名前と雰囲気が合わないから、皆には苗字で呼んでもらってます。吉河」

 あぁ…吉河だからよしこ…なのかな…。

  「じゃぁよっちゃん。よっちゃんて呼んでいい?」
  「あ、はい」

 そういった瞬間なんとなく彼女が嬉しそうな顔をした。

  「わたしはね、玲奈。斉藤玲奈(さいとうれな)」
  「え?あれ?みえさんじゃないんですか?」
  「?どうして?」
  「あ、本の表紙の裏っかわに『みえ』って…」
  「あぁっ」

 やだっ、向こうも名前勘違いしてるじゃんっ。なんだかおかしぃー。

  「あの本、お姉ちゃんのお下がりだし。みえは私のお姉ちゃんの名前。斉藤みえ」
  「あぁ~」

 彼女が恥ずかしそうな顔をする。可愛いなぁ…。自分の勘違いはだまっちゃう私は、ちょっとずるいかな…。でも、お互いの名前を勘違いして覚えてるなんて…。これも偶然にカウントしてもいいのかな? …そしたら…。

  「あ、私の事は玲奈でいいよ」
  「玲奈…さん」
  「さん付けなし」
  「玲奈……ちゃん」
  「うん、よろしぃ!あと…敬語もなしね」
  「なんで?」

 名前を知った事でなんとなく近くになった気がした。近くなったおかげで、あなたと一緒にいる楽しさを覚えた。 でも、もっともっと近くなりたいと思った。
今日だけじゃ終わりたくなかった。

  「せっかくだから、もっと…よっちゃんと仲良くなりたいから…かな」
  「ぇ…」

 私の言葉で、彼女が少し困惑の表情を浮かべる。そりゃそうだよね…。何ていうか…告白してるみたいじゃん。わたし。

  「あの…」

 彼女が次に口を開いた時に辺りが急に暗くなった。本日メインの大きな花火が上がるみたい。お祭り会場の近辺の屋台や民家やらの電気が消えたのだ。

  「あ、一番大きいやつが上がるよ?」
  「えっ?」

 私の言葉に何かを言いかけていた彼女は花火が上がるほうへ急いで向いた。…なにを言おうと思ったんだろうな…。気持ちばれちゃったかな。やっぱり。 
  まっすぐと空を見上げている彼女のキレーな横顔をじっと見つめながら、私は少し自分の行動に後悔をしていた。あせり過ぎて、なんとなく空回りぎみかなぁ~。
  次の瞬間ドォォンと地響きがしてバッと頭の上で大きく開いた。

  「うわぁ~」
  「すっごーーい!!!」

 彼女の顔は妙に無邪気で、そのワクワクとした表情は、花火のライトに照らされて色を変えていた。大きな爆音が休む間もなく鳴り響き、空にたくさんの光の花を咲かせ始めた時、夢から覚めたように周りから拍手が巻き起こる。誰に対しての拍手とかそんなのわかんないけど、空に描かれた
この芸術に対して、さまざまな気持ちをそれぞれにもって、みんな一点に向かって拍手してる。

  「好きです」

 不意に耳元で囁かれて私は驚いて声の方を見た。そこにはきれいな瞳が花火に照らされてゆらゆらしながらもまっすぐと私を見つめている彼女がいた。そのあまりにも美しすぎる顔に私は一度呼吸をすることを忘れた。自分の目の前でなにが起こっているのかもわからなくて、どうしたらいいのか分からなくて、 驚く彼女を尻目に私はその場から逃げ出してしまった。

   「わ、っま、」

…だって…。いきなりそんなこと言われても。

 嫌じゃない。むしろ、嬉しい。偶然とか必然とかそんなのはもうどうでも良くて。でも、こんなにあっさりと簡単に受け止めてもいいの?私達まだ、会って2回目だよ?
  いろんな気持ちが一度にどっと押し寄せてくる。走るのに疲れてスピードを落としたとき、急に右腕を逆方向に引っ張られた。

  「まって!!」

 彼女が私の腕をつかんで、肩で息をしながら私を見ていた。

  「ごめんなさいっ」

 私の腕をつかんだまま深く頭を下げた。でも、なんだか彼女の顔がまっすぐ見られなくて、私はうつむいてしまった。

  「い、いきなりこんな事言うもんじゃないし。…ほんとにごめんなさい。…それにあたし、女の子だし…」

 そう…彼女は女の子。今日は一緒に合コンをするだったはずの。でも、そういうことって大切なのかな…。別に、あまり大切じゃない気がする…。私はどうしたいんだろう。

  このまま彼女と付き合っちゃいたい?

 私は、今までの気持ちを整理して、それから、まず逃げ出したことを彼女に誤る事にした。

  「ごめん…」

 私がそういった後、少し間を置いて彼女は落胆した声で

  「こちらこそ、本当にすいませんでした。…本はまた次に会えたらお返しします。…今日は楽しかったです。じゃぁ」

 そういい残して走っていってしまった。

  「え、あ、ちょっと!!」

 何ていう私の声も聞こえないくらい物凄い速さで駆け出していってしまった。

  「あぁもぉ…なにやってんの私。タイミング最悪ぅ…」

 彼女につかまれていた腕の辺りをじっと見ていた。

  「もうっ!」

 ここで終わっちゃいけない。

 よくわかんないけどそう思った。あの日電車の中で出会ったときから、運命だったんだと今は思える。だからこれで離れちゃ駄目。
  私は高校生以来、久々に本気で走り、夜の闇が深くなる道を必死で彼女のあとを追った。しばらく行くとぼぅっと星の明りに照らされて、上をむいたままじっとしてる彼女を見つけた。


  「お、いつ…いたっっ」


 勢いがついたままの私は彼女の背中から思い切り抱きついた。


  「うわっ」
  「きゃっ」

 おどろいた彼女は私を振り払うように押した。

  「いったたた…」
  「あぁっ!!ご、ごめんなさいっ」

 私はそのまま跳ね返されてしりもちをついてしまった。

  「もぉ!足早過ぎ!!」
  「…すいません…」
  「あと、こんなに暗いとこに、一人にしないでよっ」
  「は、はいっごめんなさい」

 本当に申し訳なさそうな顔を彼女がしたしりもちをついたままの私に手を差し伸べた。なんだかそれがとても、特別な感じがして物語の主人公のような気持ちになって。

  「あと、敬語はだめ」
  「あ、うん」

 素直な彼女がとても可愛くて、私は両手で彼女の掌を包んだ。

  「…じゃぁ…。付き合ってください。こんなわたしでも良ければ」
  「へ?」
  「私も。…あなたが好きです」
  「玲…」

 彼女が言うより先に私は照れ隠しにぎゅっと彼女を抱きしめた。10cmほどだけど私より背の高い彼女。変に飾らない性格のまま、お日様のような匂いがする。

  「おぉきいね」
  「え?」
  「背ぇ高い」
  「あぁ…。そう?」
  「うん」

 離れないまま彼女の顔を見上げた。うん。写真で見るよりずっとずーっときれい。大きくてキレイな目だなぁ~。

  「きれーだなぁ。やっぱ」
  「えっ?」
  「ううんっ」

 思わず口にでてしまった言葉に彼女が引っかからないように、私は慌てて首を振った。…本当はあの電車で出会った日にあなたの事を知っていて声をかけたなんてバレたら、魔法が解けてしまいそうだから。

  「いこっか」
  「うん」

 彼女の手を握って駅の方へ歩いた。

 心なしか、彼女が空を見上げて目をきらきらさせいたそんな気がする。…彼女には今、何が見えてるんだろう。不意に彼女がキュッと強く手を握り微笑んだ。


  「なんか、幸せだね」
  「うん」


 本はずっと持っててもらおう。だって会うたびにずっと次の約束ができるから。


 おわり。



from 弥家比奈 2011.6.22
てな感じで、昔よく書いてた、1つの物語を双方から物語を追う「ザッピングストーリー」方式でした。(´∀`*)ウフフ


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