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オリジナル短編百合小説「銀河鉄道の夜」

今日は健全な百合ですww
一応完結してますが、前編と言いましょうか、
このお話は2話で1つの物語となってます。
もう一つは今日か明日にはアップしたいところ。

『銀河鉄道の夜』

追記からどうぞ



銀河鉄道の夜


  「ね、よしこ、」
  「んー?」
  「今日の色彩論さぁ~」
  「あぁ~?また、サボる気だろぉオマエ」
  「んーバイトがね~」

  「おいおい…」

  「ごめんっ!代筆よろしくっ」
  「はいはい…。で?何をしてくれるのかな?」
  「んー、コンパ?」
  「やだ」
  「えぇ~。よしこ来ると絶対もてるのになぁ」
  「お断り。やだよ、気ぃつかいながらそんなトコで酒飲むなんてさ」
  「んーそんなこと言ってるからいつまで経っても彼氏できないんじゃん」
  「ほっとっけ」
  「わーかった。んーじゃぁ…ま、考えといて」
  「へいへい」

 あたしが2回返事をすると、北原(きたはら)まいはよろしくっと肩を叩いて、きゃー遅刻しちゃうとかいいながら、ばたばたと走っていった。

 …元気なことで。

 とりあえず、サクッと講義を受けて図書館に立ち寄る。あさってまでのレポートの仕上げをしなくちゃなんない。

 ……彼氏か…。

 必要なもんなんだろうか、そういうものって。まいに指摘されたことが、頭の中をグルグル回って、レポートが思ったよりてこずってしまった。貸しプラスだな。

  「うわっ」

 図書館をでると辺りはすっかり暗くなってた。半袖だとすこし肌寒い。とりあえず、駅までのバスに乗り込み、コンパクトミュージックプレイヤーのイヤホンを耳にかける。家までの1時間とちょっと。この時間のこの空間が少し好き。…耳さえ塞げば自分の空間だから。

 いつもの時間よりも何本も遅い電車に乗り込んでボックス席に座って目を閉じた。酔っ払いのオヤジも化粧くさいおばさんも、目を閉じていれば視界に入ることはない。耳さえふさいでいれば声をかけられることはない…。

 そうおもってたんだけど…。

 不意に肩を叩かれた。
 びっくりして目を開けるとそこには同い年くらいの?ううん。もうちょっと上かな?女の子がたってこっちを見ていた。あたしは慌ててイヤホンをはずして「えっ?」と聞き返す。

  「あ、ごめんなさい。…となり、いいですか?って」

 えらく遠慮がちなその人は健康的な肌の色をしていた。スポーツでもやってるのかな?グロスを引いた唇が妙に印象的で女のあたしでもドキドキしてしまった。

  「あ、あ、ごめんなさい。どうぞ…」

 あたしは荷物を自分の膝の上に載せてぺこりと頭を下げた。その人はありがとうございます、と丁寧に添えて、あたしの隣にゆっくりと腰を下ろした。
 …なんだろ?おかしいな…緊張してるし、あたし。なんてーか、妙にドキドキしちゃってるし。
てか、相手女の子だし。でも…きれーだなぁ~…彼氏とかいんだよなぁやっぱ。

 …て!なに気になってんだよおぃ。

 窓の外に顔を背けたけど、どうも体がこわばって掌に変な汗をかく。やべー…なんかこういうのって…。その先にある結論はなんとなくわかってた。だけど、あたしの中でそれは知らないフリをした。

 お気に入りの曲ばっか集めて作った自分的イケトラック。でも一曲も耳に入らなくて、再生するのをやめた。
  うつむいて寝てるフリをしながら随分伸びてしまった前髪の隙間から時折、チラッと見える彼女の手を見ていた。何か本を読んでいるらしく、ゆっくりとページをめくっている。

 ってなんかあたし変態かストーカーのようだし…。

 と、突然彼女の指が止まって、今度は自分のカバンをがさがさと探っていた。…?あぁケータイか。彼女がケータイを手に取った瞬間、 膝の上に置かれていた本がばたりと音をたてて床に叩きつけられる。

  「あっ」

 と小さく彼女がつぶやいたので、あたしは反射的にそれを広った。

  「あ、すいませんっありがとうございます」

 にこりと笑うと目がなくなるんだ…。ちょっと気が強そうだけど、でもなんとなく安心できる雰囲気を持ってる人だな。あたしはそう感じながら「いえ」と返した。

  「あの…」
  「え?」
  「気になります?」
  「は?」

 突然そんなことを言われたので何の事かと、おもったんだけど…。

  「本」
  「えっ」
 うわっ手元見てたのばれてるし、

  「…お貸ししましょうか?」
  「えぇっ?!」
 ってあたし、さっきから「え」しか言ってないじゃん…。

  「返してもらうのは…うーん、また偶然に会えたらで」
  「え、そんな悪いですよっ」

 そうそう、別にこの本が読みたかったわけじゃないしっ

  「もし、あえなかったら。ま、適当に処分しちゃってください。あー…煮るなり、焼くなり」   「…はぁ」
  「あ、じゃ、私はここなんで」

 彼女はそういうとその本をあたしに押し付ける様に預けて、軽く頭を下げてから出て行ってしまった。 …あー…どうしよう。あたしはとりあえず、その本のタイトルをみた。銀河鉄道の夜…か…。著者は宮沢賢治。あたしも中学生の時に読んだ事がある。幻想的で、でもなんか切ない。
  しかたないのでとりあえず表紙をめくる。するとそこには『みえ』とマジックで書かれてあった。個人的なもちものじゃん。しかもこんな古くて名前まで書いてあるってことはかなり思い入れも強いと思われる。
 まいったなー。…あたしはこの時間の電車に初めて乗るわけだし。かといって、彼女も毎日この電車に乗ってるとはかぎらない…。返せないジャン…。でも処分なんて、もっとできないよね。すこし悩んだけど、悩んでも仕方ないので大人しくそれを無期限で借りる事にして、ページを読み進めた。
 その本はあたしが中学生の時に読んだ話と少し違っていた。おかしな事に最初と最後がまるでひっくり返ったように描かれていた。おかげで、私は退屈な電車の時間を割りと楽しむ事ができた。


 *  *  *


  「ねー!今度のさ、花火大会、いくっしょ?」
  「えぇ?んーまぁ」

 目をきらきらとさせながら、まいがあたしんとこにやってくるなりそういった。今日は清香(さやか)も一緒だ。

  「ってかさー、まいはコンパでしょ?」
  「んー。そうなんだけどねぇ…お願いがあるんだよねぇ」

 まいがあたしの目の前でパチッと手を合わせた。

  「なんだよ」
  「ふたりともさー。コンパ参加してくんない?」
  「えー!」

 …なるほど…。で、花火大会か。

  「んー。私はだめー。その日は別口で先約あり!」
  「えー!そーなのぉ?!」

 やられた!清香に先こされた!!…ってことは…あたしが自動的に…。

  「もぉ!よしこは絶対出席ね!」
  「えぇ~!!」
  「お願い!バイト先の店長の頼みでさぁ」

 …。なんのバイトだよいったい。

  「ちなみに男子は社会人ね、こっちはあたしに、よしこにあと、バイト先から女の子3人募るから。ま、つまんなかったら途中で帰ってもいいしさ、お願い」
  「おーけぃ。…この間の分と合わせて高いからなぁ」
  「わーかったわかった。…。ま、これを機会によしこも彼氏つくんな」
  「だからいらないってーの」

 まいはいいやつだ。バイトっても、服屋。だから怪しいやつじゃないし、ここの店長も良く知ってる。前に一度まいと、清香となぜかそこの店長とでご飯を食べに行った。…もちろんご馳走になった。まいはお調子モンだけど人がいいからこういうことが断れない。俗に言う、お人よしってやつかな。
 あたしはレポートの仕上げのために再び図書館にこもって、とりあえず、あの電車に乗ろうと思って少し時間を気にしながらレポートを進める。…。

  「物の見方の偏りと固定概念から発生する偽りの常識」

 なーんて妙に小難しい題材を選んでしまったから、四苦八苦してしまっている。…だけど思わぬ手助け。そう、あの人に借りた『銀河鉄道の夜』だ。 物語は一つじゃない。コレを比較することによって割りといい感じのレポートに仕上がった。あたしは心の中でこの本の持ち主。『みえ』サンに感謝する。それで、その人に感謝の気持ちなんかをどうしても伝えたくて、その後も何度もあの時間の電車に乗ってみたのだが、結局出会う事がなかった。


 *  *  *


  「よしこ!こっち」

 あんまし気乗りしなかったけど、まいのために仕方なくやってきた海辺。妙に人が多くて蒸し暑くて、はっきりいってなんだかテンション下がる。まいを見つけて歩き寄るとそこには女の子が2人。 例のバイト先の女の子達らしい。

  「まだ、男子きてないから、とりあえず2人紹介しとくね。こっちが美奈(みな)。で、こっちが柴(しば)ちゃん」
  「あ、ども、吉河(よしかわ)です」

 あたしが頭を下げると先に紹介された子が知ってますぅ~!とかいう。?なんで?
  
  「まいサンに写真とか見せてもらってましたし♪やー、実は、吉河さんに会う方が楽しみだったりして♪」
  「うん、うん、いやー、写真でみるよりもっとキレーだわ」
  「しゃしん…?ですか、…はっ!!!まぁいぃ~!!」

 あたしがまいをにらむとまいは笑いながら、いやいや、ほらね、という。

  「ほら、前ゼミのみんなでビアガーデンいったじゃん。その時の写真をバイト行く前に現像してさ、で、バイト先で見てたら美奈が妙に気にいっちゃってさ」
   「吉河さんのファン1号です」
  「ほら、吉河さん反応困るからさぁ」

  柴ちゃんに肩を叩かれるみうなちゃん。…やり易そうな職場だな。まいのバイト先って。

  「あ、そうそう、あと一人来るんだけどこの子はシフトがうちらよりずれてて、遅れてくると思うから」
  「りょーかい」

 とりあえずあたし達はコンパ相手との待ち合わせ場所に移動する事にした。
 それにしても…。せっかくの花火大会もこのテンションじゃがた崩れだな…。それに、ココ最近のあたしの頭の中にはあの『銀河鉄道のみえ』がいた。会えるわけ、ないのにねぇ。


 *  *  *


  「えーそうなんですかぁ~、いやーすごぉい!」

 …やっぱこういう場って好きになれない。つまんないんだよね。こういうのってさ。もろに、何ていうか集団見合いみたい。あたしはこのラムネがなくなったら帰ろうと思い、グイッと飲み干した。まいに、そろそろ帰ると言う事を伝えた。

  「えぇ!?よしこ、花火まだ始まったばっかジャン!」
  「ん、ごめん。人酔いしたみたい」
  「そっかぁ~。OK、気をつけてかえんなよ?」

 まいへの貸しはちゃらにしなきゃな~なんて思いながら、あたしはその場を離れた。その際、『俺、送るわっ』なんていう奴を丁重にお断りして。

 人の波に逆らって星空を眺めながらゆっくりと駅まで歩いた。晴れた日の夜空。まるで銀河鉄道の夜。花火大会のおかげで、周りの明りがいつもより落とされている分、本当にきれいだ。
  寂れた駅は年に数回、今日のように妙に活気立つのだろう。あたしは時刻が刻まれたプレートとにらめっこをしていた。丁度今、電車が出てしまったところらしく、次の電車まで、あと30分。何にもない駅なのでどうしようかと途方にくれていた。
  ぼーっと時刻表を見ているとあたしは思わずあっと声を出してしまった。そんで…信じられない。と、自分の目を疑った。そして、向こうも同じ様な表情をしていた。

 …そう。「銀河鉄道のみえ」サン。

 どちらからともなくぺこりと頭を下げた。そんでなんとなく近づいてみた。途中で、今日、本持ってないし。なんて思いながら。

  「この間は、どうも」
  「あ、いいえ。なんか押し付けちゃったみたいだし」
  「いやぁ!そんな事ないです。すっごく助かりました!」
  「?」
  「あぁ、れ、レポート。…レポートの参考に」
  「へー。そうなんだぁ。…なんか、嬉しいな」

 やばいっすっごいスピードで心臓が動いてる。あたしは額ににじんで来た汗をこそこそとハンカチでぬぐう。

  「…花火大会、いかないの?」
  「あ、いや…。…実は…コンパ抜け出してきちゃったトコなんです」
  「え、そーなの?…なんだ。…実は私はこれからコンパに参加の予定なんだけど…」
  「え?」

 ってことは彼氏いないってことなの?!…て何そんなトコで反応してんだ、あたしは。

  「でも、やめよっかな」
  「え?なんで?」
  「うん…人数あわせだし、なんとなく今から入りにくいじゃない?」
  「まぁ…確かに」

 ぼうっと彼女をみていると急にがばっと腕をつかまれた。

  「へっ?」
  「いこっ」
  「ど、どこに?」
  「花火。みにいこっ」

 あたしは言われるままに彼女に腕を引かれてフラフラと駆け出す。

  「会場じゃなくて、結構キレーに見えるトコがあるのっ」

 彼女は嬉しげに、そう叫んだ。…。まるで歌でも歌うように。彼女に引っ張られて走ってるうちに、だんだんとわくわくしてくる。なんだろ…すっごい楽しいんだけど。

 明りの少ない方へ、だんだんと闇が多くなる方へ行くにつれ、星空が輝きだす。時折、花火の光に照らされて点滅している。耳の奥で機関車の汽笛が聞こえる様な気がした。

 「はぁっはぁっはぁっ」
 ふたりともに肩で息をしながら芝生の上に座り込む。そこには、あたし達のようにゆっくりと花火を見ようとやってきている人たちが何人かいた。カップルだったり、年配の人たちだったり。たぶん、地元の人なんだろうか。浴衣を着ている人が結構いた。

  「結構、走ったねぇ」
  「うん」

 彼女は息を整えながらハンカチで額をぬぐった。あまりじっと見るとなんだか心の中がばれて
しまいそうだったから、だからあたしはゴロンと寝転がって星空を見つめた。

  「…。きれーよね、」

 ドンッという破裂音とヒューッという空気を劈く音。ちょっと遅れてパァンと夜空に光が広がる。あたしは彼女の背中越しにそれを見つめていた。

  「きれー…ですね」

 いつもなら、おぉー!とか調子に乗るとたまや~なんて叫んじゃう、恥ずかしいやつなんだけど、今日は違う。ノンスリーブからむき出しになっている彼女の肩に、じっと見とれていたから。
 しばらくすると彼女もあたしの隣にごろんと寝転がった。

  「あの…今日は」
  「え?」

 あたしは不意に思い出したあの本の事を切り出した。

  「今日は持ってないんですよ、本。…せっかく会えたのに」
  「あぁ。いいよ、また今度で」
  「でも、次、いつ会えるかわからないじゃないですか」

 なんだか妙にむきになっていた。彼女はフフッと笑って、じゃぁといった。

  「じゃ、次に会う約束、しよっか」
  「えっ」

 …そう、実はそう切り出そうと思っていた。あたしも。でもなんだか『い・か・に・も』だったのでどう言おうか迷っていた。

  「いいんですか?」
  「うん。…あ、やだったら構わないけど」
  「いいえっ、やじゃないですっ」

 あぁ~なんだかめちゃくちゃダサイ。あたし。

  「なんかさ、運命感じちゃうよね?」
  「えっ?」

 優しく笑う彼女の顔は花火に照らされて妙にきれいだ。うん、もう確定してるんだな、あたしの心は。こういうの、いわゆる『一目惚れ』ってんだな。きっと。…女の子にだけどさ。

  「あ、そうだ。まだ自己紹介もしてなかったよね?」
  「あぁ、そうだ。えぇっとあたしは吉河です。吉河麻美(よしかわあさみ)」
  「へー、麻美チャンって言うのかぁ、かわいいなぁ」
  「いやぁ、あんまし名前と雰囲気が合わないから、皆には苗字で呼んでもらってます。吉河」

 彼女は少し困ってそれから

  「じゃぁよっちゃん。よっちゃんて呼んでいい?」
  「あ、はい」

 よしことか、よしかーとか普段はそういう呼ばれ方をしてる分、なんか特別っぽくて嬉しかった。

  「わたしはね、玲奈。斉藤玲奈(さいとうれな)」
  「え?あれ?みえさんじゃないんですか?」
  「?どうして?」
  「あ、本の表紙の裏っかわに『みえ』って…」
  「あぁっ」

 あぁっといってクスクスわらう。

  「あの本、お姉ちゃんのお下がりだし。みえは私のお姉ちゃんの名前。斉藤みえ」
  「あぁ~」

 うわっ、言うんじゃなかった。あたしは羞恥と後悔の念に苛まれる。

  「私の事は玲奈でいいよ」
  「玲奈…さん」
  「さん付けなし」
  「玲奈……ちゃん」
  「うん、よろしぃ!あと…敬語もなしね」

 あたしは、なんで?と聞き返すと彼女は急に真剣な顔つきになって、少し考え込んでいた。
なんか、まずい事聞いたっけ?敬語に嫌な思い出とか…

  「せっかくだから、もっと…よっちゃんと仲良くなりたいから…かな」
  「ぇ…」

 えぇっと…もしかして気に入られてる?あたし。…まてよ、そもそも声をかけて来たのは彼女で
、この本を預けたのも彼女で、花火を見ようといったのも彼女で、会おうといったのも彼女で…。
これって…もしかして。

  「あの…」

 あたしが言いかけたとき、不意に辺りが暗くなった。祭り会場の方の電気が一斉に消えた様だ。

  「あ、一番大きい奴が上がるみたいよ?」
  「えっ?」

 彼女がそういったと同時にカウントダウンの声が聞こえた。そしてみんなの期待を背負って打ち上げられたそれは、暗い闇に一筋の光線を描きながら高く高く上っていく。しばらくして、ドォォンと地響きがしてバッと頭の上で大きく開いた。

  「うわぁ~」
  「すっごーい!!!」

 ぱらぱらと色を変えながらやがて消えていく。すると今度は休む暇もなく連弾で花火が開く。
周りから拍手が巻き起こる。そんな花火の光に、カラフルに照らされている彼女も一緒に拍手していた。けど、あたしの頭の中はもしかしての期待ばかりで、いつもよりも、数段舞い上がっていた。
 出会ったばかりだけど、完全な一目惚れなんだけど、女の子同士なんだけど…。あたしは彼女の耳元に近づいて小さくつぶやいた。

  「好きです」

 と。彼女は驚いてこちらを向いた。あたしはまっすぐ彼女を見ていた。いつもなら逃げちゃうけど、でも今日はなんか特別の日のような気がして…。期待が高まりすぎて、思わず駆け足になるあたし。しかし、彼女は突然立ち上がってあたし達が来た駅の方に駆け出した。

  「わ、っま、」

 うわーまずった!!そりゃそうだよね、いきなり女の子から告られても…もう一人の自分が頭の中で話しかけて来た。…でも、こんな事してる場合じゃないって別のあたしが呼びかけた。あたしはすぐに立ち上がって彼女を追った。

  「ごめんっっまって!!」

 ずっと陸上をやってたあたしにとって、彼女の足に追いつくなんて容易い事だった。

  「ごめんなさいっ」

 あたしは彼女の腕をつかんで頭を下げた。彼女は立ち止まりうつむいていた。

  「い、いきなりこんな事言うもんじゃないし。…ほんとにごめんなさい。…それにあたし、女の子だし…」

 わらをもすがる気持ちで彼女に謝った。あぁ…今日のあたしはサイテーかも。

  「ごめん…」

 彼女がそう小さく呟いた。…そりゃそうだよね…。あたしが勝手に勘違いして、舞い上がってたんだし。

  「こちらこそ、本当にすいませんでした。…本はまた次に会えたらお返しします。…今日は楽しかったです。じゃぁ」

 あたしは彼女の腕を離して駅へ向かって駆け出した。カッコワルイ…

  「あーぁ。だっせー」

 しばらくしてあたしは走るのをやめて空を眺めていた。なんていうか、現実は物語のようにうまくは流れない。まだ、あって2回目の人。…だけどあたしはなんとなく、大切なものを失ったような大きな喪失感に駆り立てられていた。

  「お、いつ…いたっっ」

 突然がばっと後ろから抱きしめられた。

  「うわっ」
  「きゃっ」

 おどろいて突き飛ばしてしまった。

  「いったたた…」
  「あぁっ!!ご、ごめんなさいっ」

 しりもちをついた彼女を抱き起こした。

  「もぉ!足早過ぎ!」
  「…すいません」
  「あと、こんなに暗いとこに、一人にしないでよっ」
  「は、はいっごめんなさい」
  「それから、敬語はだめ」
  「あ、うん」

 彼女にまくしたてられる様にあたしは責められる。てか、最初に逃げたのそっちだし…。理不尽だなーっていう気持ちと、まだ繋がっていれる喜びで、頭の中がぐるぐるしていた。

  「…じゃぁ…。付き合ってください、こんな私でもよければ」
  「へ?」

 心臓が止まるかもしれない、なんて初めて思った。頭の混乱はまだ解決していない。

  「私も。…あなたが好きです」
  「玲…」

 あたしが言う前に彼女があたしを抱きしめた。柔らかなコロンがあたしの鼻をくすぐる。

  「おぉきいね」
  「え?」
  「背ぇ高い」
  「あぁ…。そう?」
  「うん」

 そういって彼女があたしの顔を見上げた。

  「きれーだなぁ。やっぱ」
  「えっ?」
  「ううんっ」
  「いこっか」
  「うん」

 彼女に再び手を引かれて駅の方に歩く。今度はちゃんと手をつないで。山の中に長く伸びる駅への道は、星空も手伝ってとても幻想的で、銀河鉄道の夜のよう。きっとジョバンニもカムパネルラもこんな風に星空を眺めていた。そんな気がした。

カムパネルラは旅立ってしまうけど。私達はいつまでも二人でいたい。そう思った。

だってこんなに…

  「なんか、幸せかも」
  「うん」


 幸せだから。


おわり。

from 弥家比奈 2011.6.22
これ、リバーシブルストーリーになってます。このあと、玲奈視点の話が来て、完結するんですー。そっちも、今日か明日にアップしたいww




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