ヒメユリ

百合小説サークル「ヒメユリ*ひメユり」です。主に活動と百合について語ります。
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『わたしの気持ち』梓×唯(けいおん!SS)

ヤッベー久々にかーっとなってwだーっと書いたw
何にも考えずにブログに直書きしてしまったわ~。

というわけで誤字脱字多し!と思うのですが、
時間が出来ればまた「ひメユり」の方にテキストhtmにして
アップする予定です。

ま、取りあえず初めての梓×唯SSでございます。
続きを読むからいってらっしゃいませ~。







『わたしの気持ち』(梓×唯)けいおん!SS


放課後。ジャズ研である純と帰宅部である憂にまた明日と、挨拶をしてわたしは音楽室を目指して階段を上り始めた。夏場はずっしりとのしかかるムスタングがわたしの背中にじんわりと汗をにじませる。上を見上げるとそのまま後ろに引っ張られて倒れそうな気がしたので、俯いたまま一気に階段を上り切る。

 「失礼しまーす」

 部室をあけるときにクセになっている挨拶。どうせわたしが一番なのは知ってる。一番に来て、トンちゃんにエサをあげるのがわたしに課せられた重大な任務。
 最初は唯センパイのもはやデフォルトとも言える天然ボケのせいでここに連れて来られた不憫な亀だと思っていたけど、唯センパイの言う通り、わたしの後輩でもあるし、…確かにかわいい。

 「トンちゃん、今日も暑いねー」

缶に入れられたトンちゃんのエサを数個投げ込むと水面に顔をだしてぱくりとエサを口へ放り込む。唯センパイ曰く、ピーナツを入れてみたくなるほど愛嬌のある鼻。エサを食べるときその鼻の穴がヒクリと動くのがおもしろくて、いつもじっと見てしまう。

 「ちわーッスぅ」
 「うぅ…あーつぃよぉー」
 「ほら、唯しっかり歩けよ」

 背中を向けていたけど、声の順番から言って、律センパイ、唯センパイ、澪センパイがやってきたようだった。わたしは振り向いて「こんにちわー」と答えると、「はい、こんにちわ、梓ちゃん」とほんわかな声でむぎセンパイが答えてくれた。
 センパイ達はソファーに鞄を置くと、当たり前の様に自分の定位置に座る。いや、むぎセンパイだけはいつもの様にそのままお茶の準備に向かう。

  「あーつぅーぃー………もぉ、だめぇー」
  「だはっ!死ぬなっ唯っっ」
  「律っちゃん…ギー太のことを…たのんだよぉ…」
  「おぅ、任せとけ」
 
 いつもの様に律センパイと唯センパイの三文芝居が始まる。
唯センパイはそのままパタリと机に突っ伏してしまい、律センパイは唯ー!!と叫びながら椅子の上に立ち上がる。…全くどこまでも暑苦しい人たち。
 わたしはため息をつきながらトンちゃんのエサ缶を水槽の隣に置いて、澪センパイ、律センパイの斜め横の席に腰掛ける。すると、唯センパイがむくりと顔を起こした。

  「あ、それと、わたしの代わりにあずにゃんには一日一回以上抱きついてね♪」
  「にゃにゃっっ!!」

 唯センパイの言葉に思わず反応をすると、まかされたー!と律センパイがこちらを向く…。

  「フ、フ、フー(ニヤリ)」
  「り、律センパイ顔怖いです…」
 
 両指をワキワキさせながらわたしににじり寄る。な、なんか唯センパイみたいなナチュラルさがないので、怖いし、ちょっと…。わたしは椅子から立ち上がり後ずさりをする。

  「覚悟しろ!梓ぁー」
  「い、イヤですー!!!」
 
  【 パチーン!!】

 覆いかぶさろうとする律センパイにわたしは思わず手が出た。

  「おぉう…」
  「あ、す、すいません…つい…」
 
 振り上げたわたしの手が綺麗にヒットした律センパイの頬はほんのりと赤みを帯びていた。

  「み、澪ぉー」
  「…バカ律」
  「し、しどい…」
 
 しゅんとなる律センパイに澪センパイはやれやれな表情でそっぽを向いた。まぁまぁまぁまぁと
ほんわかペースのむぎセンパイが、トレーに汗をかいたグラスをのせて机までやってくる。

  「あーずーにゃんっ」
  「にゃひっ!」
 
 突然抱きつかれたので悲鳴を上げると唯センパイはあついと言いながらいつもの様に頬ずりをして来る。むにゅむにゅとほっぺたがくっついて、そこからじんわりと暑くなる。でも…不思議と嫌な気はしない。
 
  「け、気配を消して突然抱きつかないでくださいっ」
  「えー、じゃぁ」
 
 唯センパイは一度わたしから離れてわたしを見つめる。

  「な、なんですか?」
  「あずにゃん!抱きつかせていただきます」
  「え、な……そんな風に言われると…ちょっと…」

 わたしが身構えると唯センパイはえーーとうなった。

  「もーあずにゃんたら我がままサンなんだからぁ」
  「わ、…わがまま…なんですか、」
  「そーだよー」

 わたしがわがまま??…そもそも、どうしてわたしが悪いみたいになっているのかイマイチ理解ができない。そりゃ確かに、律センパイを打ってしまったのは悪いかもしれないけど…、でもあれも事故のような物だし。

  「わたしがわがままなんじゃありません、唯センパイが強引なだけです」
  「えぇ!?そうだったの!?」

 唯センパイは大きくのけぞるとガクガクと足を揺らし始めた。

  「確かに唯は多少強引な所があるよなぁ」
 
 私たちのやりとりを聞いていた澪センパイが振り向いて意見する。

  「み、澪ちゃんまでっ」
  「まーいいじゃねーかぁ。だいたい梓も別に唯に抱きつかれても嫌な顔しないじゃん。あたしは思いっきり叩いたくせによー」

 律センパイがにやにやしながら席にドカッと腰かけた。うぅ…痛いところをついて来る。
 むぎセンパイは丁寧にお菓子とお茶を配ると自分も定位置に腰をかけてニコニコと私たちを見ていた。

  「あずひゃ…」
  「ってー!唯センパイなに泣いてるんですかっっ」

 よぼよぼとわたしの方に近づいてくる唯センパイをわたしは受け止める。

  「ぼぉね、わだじね、あずにゃんにごばまれぢゃっだらで…」
  「お、おちついて、ほら、鼻が出てますっ」

 ポケットからティッシュを取り出すと唯センパイの鼻を綺麗に拭う。…もぉ本当にしかたない人だ。感情の起伏が激しくて、自分を抑える事ができなくて。

  「あーずーにゃーーーん」
  「あーもぅはいはい、わかりましたから」

 唯センパイはぎゅっとわたしを抱きしめてスンスンと鼻をすすっている。自分の気持ちに素直に生きてる人。それが平沢唯。だと思う。…なんかちょっとうらやましい。

  「あついんじゃなかったのかよぉー」
  「フフ、クーラーも苦手なのにね」

 いつの間にかクーラーが部屋の温度を快適にしてくれていたのにもきがつかなかったわたしは、むぎセンパイの一言でそれに気がつく。

  「ほらもぉいいかげん部活はじめるぞー」
  「そうだぜー、夫婦喧嘩はよそでやれよなぁ」
  
 ふ、ふ、ふ…夫婦喧嘩!?

  「わ、わたしと唯センパイは夫婦なんかじゃありませんっ」
  「えっ!?そーなの?私たち夫婦じゃないの?」
  「はぃ?何いってるんですか、唯センパイ」

 唯センパイはぱっとわたしから離れてまたうるうると目を潤ませながら後ずさりをする。はぁ…めんどくさい人だなぁもぅ。

  「夫婦なわけないじゃないですか」
  「だ、だってぇ!この間、ヤったじゃんっ!」
  「や…!?」

 わたしの顔がこん限り赤くなるのは跡にも先にもこの時だけだと言える。そう宣言出来るほど顔があつくなった。やるとかやらないとか…一体何の話なのか皆目検討もつかないけど、この時あらぬ想像をしてしっまったわたしは、この時点で完全に負けていた。

 「やっ!?なに!?オマエら実は…いやいやいやー、お、おちつけっ」
 「…ヤッタ?ヤッタ?ヤッテヤルデス?…ヤッテヤリマシタ?」

 律センパイが立ち上がりオロオロとし始める。隣にいた澪センパイは壊れたレコードか、読経テープの様になにかをブツブツつぶやいている。むぎセンパイは……キラキラした目でこちらを伺っている。

 「お、オマエら、お、女同士だろぉ?ちょ、み、澪ぉっ」
 「…はっ!!そ、そうだよ、まだここぉうこうせいだろぉ!そう言うのは早いよっ」
 「は?何言ってんだ澪、そこじゃねぇだろ?」
 「え?な、あ、あたし何か変な事いったか?」
 
 あぁ、なにかもぉとてつもなくめんどくさい事になりそうな予感が…。

 「あのー」

 と、むぎセンパイが手を挙げた。
  
 「な、なんだよ、むぎ」
 「わたしは別にいいと思うんだけどぉ…その…本人達がそれで幸せであれば、うん。いいとおもうの!」
 
 むぎセンパイの一言でわたしを含めた残りの4人が一同に固まった。…いや、唯センパイは違った。どうやらイマイチむぎセンパイの言葉の意味を理解出来ていなかったらしい。

 「???むぎちゃん?」
 「唯ちゃんは幸せ?」
 「へ?えーーあーーー、うん、幸せだよぉ」

 にへらと顔を崩して後ろ頭をぽりぽりかきながら唯センパイが答えた。すると、ニコリとむぎセンパイは微笑んで、同じ質問をわたしにして来た。…もうどこから弁解していいのかわからないほど修正が利かなくて、わたしはえーとかあーとかまぁとか…つまりなんとなくそんな感じで答えてしまった。

 「ね、律ちゃん、ここは優しく見守ってあげましょ?」
 「…ま、まじかよぉ」

 あらぬ誤解をさせてしまった上にそれが肯定されてしまい、ここは全力で否定しなくては行けない所だったのに、わたしはその機会を逃してしまい、結局言うに言えない状況で、今日の部活を終えてしまった。

 「あれ?むぎ、どこいくんだ?」

 みんなで階段を下りていた途中の踊り場。むぎセンパイが、じゃ、今日はここでと突然いった。

 「ん、今日はこのあとさわ子先生と約束があるから」
 「へー、なんだよーむぎを呼び出すなんて…さわちゃん何企んでるんだぁ?」

 律センパイが詮索を入れようとすると、違うの違うの、とむぎセンパイが慌てて否定した。

 「わ、わたしが言い出した事だから、だから別にさわ子先生がどうってわけじゃなくて…」

 なんとなくモジモジとして落ち着かない様子のむぎセンパイが妙に新鮮で、それほど鈍感じゃないわたしは、これはもしかして特別な関係だったりするのかもしれないと直感的に思った。

 「そっかーじゃ、うちら帰るぞー」
 「うん、また明日ね」

 私たちは職員室に向かうむぎセンパイに手を振って学校を出た。


 「なー梓ー、本当にいいのかーお前」
 「え?なにがですか?」

 律センパイが眉間にシワを寄せて聞いて来る。…なんだろうと思ったけど、練習ですっかり忘れていたが、どうやらあの練習前のゴタゴタで、わたしと唯センパイがそういう関係だというのは、まだしっかりと生きていたらしい。

 「わ、わたしも…さ、本人同士が幸せならそれでいいと思うんだ」
 「澪っ、お、お前どーしちまったんだよ」
 「えぇ?…な、なにか変かな」
 「だって、そりゃーその…女同士だぞ?結婚できねーんだぞ?」

 一般的常識を口走っているのは今日は珍しく律センパイだけだった。

 「でもさ、偉大なミュージシャンだってそう言う人とかいるだろ、フレディ・マーキュリーとかエルトンジョンとかさ」
 「そ、それとこれとは…」
 「違わないだろっ」

 突然言い争いをはじめた澪センパイと律センパイにわたしと唯センパイはただぽかんと見守るしかなかった。

 「どーしちまったんだよ、澪」
 「別に…ただ、その人が幸せだったらソレで良いって言ってるだけじゃないか」
 「…わーかったよ、もう別に言わないよ」
 
 そう言うと律センパイは急にむっとして足早に帰ってしまった。

 「み、澪ちゃん…?」
 「澪センパイ?」
 「あ、ああ、ごめんな、なんかついカッとなっちゃってさ」

 残された澪センパイはカラカラと笑うが、その顔はどことなく寂しさを含んでいた。

 「あ、じゃぁまた明日な!」
 「うん、また明日ねー!」
 「失礼します」

 澪センパイに手を振ってわたしと唯センパイは信号を渡った。

 「あー…なんだそう言う事かぁ」
 「へ?何がですか?」

 今日は練習以降、苦手なクーラーのせいもあってとってもおとなしかった唯センパイが何かを思いついたのか突然上を見上げてそうつぶやいた。

 「いやー律ちゃんや、むぎちゃん達が言ってた事の意味」
 「ふえ?……い、今更ですかー!?」

 わたしは思わず肩にかけていたムスタングを落としそうになった。

 「フフフー、わたし勘違いしてたよー」
 「…でしょうねぇ」

 体全身から力が抜けるおもいでいっぱいだった。まったくこの人は…。

 「って、唯センパイ!?」
 「あーずにゃーん、ここ寄って帰ろうー!」

 後ろを振り向くとこつ然と姿を消した唯センパイは、鼻息を粗くして氷あんみつと書かれたのれんの前に立っていた。丁度おこずかいも貰ったところだったので、わたしは唯センパイの後ろについてお店に入った。

 「うはー、おいしそうだよぉ」
 「唯センパイ!鯛焼きがっ!鯛焼きがパフェの上に乗ってます!!」

 夏季限定鯛焼きパフェを見つけて当初の目的を忘れかけたわたしは、取りあえずそれを頼んで、先ほどの話を再開する。

 「んー、わたしね、ほら、ゆいあずで漫才やったじゃない」
 「あー…漫才…になりますかね、あれ」
 「あぁいうの、夫婦漫才っていうんでしょぉ?」

 あーなるほどーなるほど…わたしの頭の中で色んな物がやっとリンクする。

 「唯センパイ、それを言うなら夫婦(めおと)漫才です」
 「なんですとぉ!」

 唯センパイの勘違いのせいで私たちは本当の夫婦扱い、おまけにそのことでなぜか律センパイと澪センパイが喧嘩しちゃうし…。この始末、いったいどうしたらいいんだか。

 「じゃ、じゃぁ、律ちゃんが女の子同士でなんて良くないとか言ってたのって…」
 「そ、そうですよ!センパイが変な事言っちゃうから話がおかしくなっちゃって…」
 「じゃぁ、むぎちゃんがわたしに幸せだって聞いて来たのは…」
 
 なんとなく背中がカーッと熱くなったのでわたしはお冷やをガシッとつかんでゴクゴクと飲んだ。それから一息ついて小さな声でつぶやいた。

 「わ、わたしと、その…夫婦である事が幸せですか?って…ことだと思います」
 「なんと!」

 明日は二人で土下座だなーとか頭の隅っこで考えていると、お互いの頼んだ和スイーツが運ばれて来たのでしばし、中断。

 「あずにゃーんこれちょっと上げるから鯛焼きちょっとだけ頂戴」
 「しかたないですね、…はい、どうぞ」
 「あーん」

 最中生地でサクサクした鯛焼きのお腹の部分をちょっと割って、粒あんとバニラアイスと寒天をすくって、大きな口を開けている唯センパイの口の中にスプーンをすべらした。

 「おぉーー新☆食☆感っ♪んーおいひぃねぇ」
 「あぁ、もぅクリームついてますっ」
 「んー」

 紙ナプキンを取ってセンパイの口周りに白く残るクリームを拭く。…口を開けると大きいのに、唇は意外と薄くて小さいんだなーとか、なんとなく思ってしまう。

 「じゃ、お礼にあずにゃんも、あーん」
 「じ、自分で食べます」
 「いいじゃーん、夫婦なんだからさー」
 「だからそれはっ」

 言いかけたとき、にっこりと笑ってグイっとわたしの口元までスプーンを差し出すので仕方なく口の中にそれを含む。

 「あ、こっちもおいしい!」
 「でしょでしょー、今度はみんなでこようねぇ」
 「そうですね!」

 ん?なにか今大事なところではぐらかされた気が…。考えてみたけど、唯センパイの天然がなせる奇跡的な間の外し方にわたしはしてやられてしまう。

 ■

 「おーいしかったねぇ」
 「そうですねぇ」
 
 店を出てすっかり満足したわたしと唯センパイは、また二人で帰り道を歩き始めた。ショワショワと蝉がなく鳴き声も夕方にはちょっとだけ落ち着いて来たみたいだ。うだる様な暑さもなんとなく引いて来てそろそろ夏の夜がくる。そんな雰囲気だった。
 
 「澪ちゃんや律ちゃんとかにも教えてあげよう!甘いもの食べたらきっと仲直りできるよぉ」
 「あー」

 思い出した!そうそう、それです、その問題。わたしが振り向くと、ピタリと唯センパイが足を止めた。

 「ん?どうかしましたか?」
 「うーん、でもねぇ、わたし、あずにゃんのこと大好きだから、夫婦(ふうふ)でもいいなぁ」
 「にゃにお!?」

 あ、あれ?この後におよんでまた話がこんがらがりそうな予感。

 「けいおん部のみんなや、さわちゃん、和ちゃん、憂だってとんちゃんだってみんな大好きだけどねー」
 「あ、あぁ…そうですよね」

 もぉ、相変わらず紛らわしい!!なぜかわたしはその度に心臓がドキドキして体全体で飛び跳ねてしまいそうになるのに。

 「わたしだって、みんなの事大好きですよ」
 
 取りあえず落ち着く意味も込めてわたしは唯センパイにそう返した。するとセンパイは首を横にひねる。

 「んー、でもなー…あずにゃんはもっと特別かなぁ」
 「え?」

 ……え?
 …ええ?

 「ええええええええ!?」
 「だってぇ、わたしは他の誰よりもあずにゃんに抱きつきたいと思うし、毎日会いたいし、あずにゃんの事、すっごく頼りにしてるんだよぉ」
 「そ、それは…う、憂!センパイには憂だっているじゃないですか」
 「そうだけど…でもぉ…あずにゃんと一緒にいたいって凄く思うもん。これからもずーっと」
 
 え、なにこれ、ちょっ、まっ……/////////

 どうしたらいいのかわからなくて、心臓がありえないくらいドキドキ言って、耳まで熱くて、たぶん、今のわたしの顔はとにかく…

 「あずにゃん、真っ赤」
 「そ、そりゃ!そんな事言われたら誰だって真っ赤になりますよっ」
 「えへへ、ちがうよぉー、夕日がほら」

 確かに言われてみれば辺りが真っ赤になっている。
 唯センパイが指差す方向を見ると夕日に照らされた川がオレンジ色にキラキラと反射している。

 「きれい…」
 「そうだね」
 「あの…せ、センパイ」

 …あれ、わたし何を言おうとしたんだろう。思わず何かが心のなかからこぼれてしまいそうになった。…でもこれって何なのかわからない。

 「どーしたの?あずにゃん」
 「……なんでも…ないです」

 結局もやもやした物に阻まれて、わたしの心の奥にある何かはまたその場所にもどってしまった。だけど、唯センパイはこの期に及んで追い打ちをかけて来る。
 スルスルと当たり前の様にわたしの肩に手を回してギュッと抱きしめる。

 「わたしね、こうやってあずにゃんに触れてるとね、とっても幸せなんだよぉ」
 「…はい」
 「ねぇあずにゃーん」
 「…なんでしょうか」
 「…わたしじゃーだめかなー」
 
 ////////駄目って…何がですか…。

 「うーん…駄目かぁー」

 耳元でそう小さく聞こえたと同時にゆっくりと唯センパイの腕が離れて行く。…いいの??これでわたしはいいの?心の中で何かが小さく震えた。なにか、大切な事を伝えなくちゃいけない。わたしは急いで振り向いて唯センパイに向き合った。

 「あの……」
 「ん、いいの、いいの、仕方ないよねぇ、やっぱり律ちゃんの言う通りかもしれないねぇ」
 「えっ」

 まずい、
 まずい、
 まずい、
 まずい…。

 気持ちばかり焦って言葉が出て来ない。…でもなんで自分がこんなに焦っているのかもよくわからない。唯センパイはいつもの優しい笑顔だけど…でも…。

 「さて、遅くなるといけないし、憂も心配しちゃうからねぇ、帰ろう」
 「…あ、」

 結局何も言えないわたしは、その後も唯センパイの後ろをとぼとぼとついて歩き、別れ道で手を振って帰った。
 
 ひとりで改めて考えるとなにかとんでもなく大変なことになっている事に気がついて、急に不安になる。どうしよう、どうしたらいいんだろう。
 宿題をしていてもなんとなく集中出来ないし、ご飯だって余り欲しくない。ま、これは帰り道の買い食いのせいもあるけれど、お風呂に入ってもちっとも気分が晴れなくて、とうとうベットの中まで憂鬱な気持ちがついて来た。

 「どうしよう」
 体勢をかえても何をしても、唯センパイのことを考えてしまう。ましてギターに触ろうなんて思えないし。
 ちらっと時計を見ると22時を回ったところ。いまならまだ誰かに相談出来る…。散々考えてわたしは話を一番わかってくれそうな澪センパイに電話をかけてみる事にした。

 「…と、いうわけなんです」
 『そうか、なるほどな、勘違いだった、で済んでいたのが、本当になっちゃったってワケか』
 「…はい…」
 『…梓はどうなんだ?…その、唯の事』
 「えっ……」
  
 当然と言えば当然だろう、問題はそこにもある。唯センパイの勘違いが発端で、澪センパイと律センパイは喧嘩をしてしまった。それも大いなる問題だとおもう。だけど、わたしがここまで悩んでいるのは、他でもない、その勘違いから、唯センパイ自身の胸の内を打ち明けられる展開になってしまった事なのだ。つまり、その問題はわたしの気持ちにも大きく関わってくるのだ。

 「わ、からない…です」
 『そうか…なぁ、梓にとって唯ってどんな奴なんだ?』

 突然そんな事を聞かれて、わたしはちょっと考える。…それから思いつくままに答えた。

 「えと…いつもだらだらしてて、なかなか練習しないし、天然だし、我がままだし、暴走したら停められないし、一つの事に熱中しだしたら他のことみえなくなっちゃうし…」
 『おいおい、酷いな…アハハ』
 「でも…いつも優しいし、実は努力家だし、ギターとかもホント尊敬しますし…それに……すごくあったかい」
 
 そう言った所で自分の目から涙が落ちている事に気がついた。

 「あ、あれ?」
 『どうかしたのか?梓』
 「いや、その…」

 胸の奥が小さく震えて、それからチクチクと傷み始める。……コレって…これって…。ぎゅっと目をつぶるとまぶたの裏にパッと唯センパイの笑顔が浮かんで消えた。

 「み、澪センパイっ」
 『だ、大丈夫か?泣いてるのか?梓っ』
 「わ、わたし、大変なことしちゃいました…」
 『え?』
 「わ…わたし…唯センパイのこと……きなのに…」
 『梓…』
 「うぅ、ぅえっ、ひっく…」

 ボタボタと落ちる涙はわたしの膝を濡らして行く。携帯電話を持つ手が震えてギ上手く呼吸が出来なくてュッと唇を噛み締める。

 『梓、わたしじゃないだろ?』
 「ふぇ…っ」
 『気持ちを伝える相手、わたしじゃないだろ?』
 「……は。はひっ!」

 わたしは携帯電話ごしの澪センパイに頭を深々と何度も下げて電話を切り、そのまま、簡単に着替えて、ムスタングを肩にかけて家を飛び出した。
 
 
 ■

  「はぁ、はぁ、はぁ…」
 結構遠かった…。
 せっかくお風呂に入ったのに汗で体がベッショリ。…時間がなかったせいで髪もちゃんとツインテールには出来なくてサイドポニー。…てか、こんなんでいいのか、わたしっ!!
 チャイムを押せないまま、平沢家の前に棒立ちしてしまった。

 「あれ?…梓…ちゃん?」
 「え?」
 
 声に振り返るとそこには唯センパイの優秀な妹で、わたしの大事な親友である憂の姿が。
 
 「う、憂ぃ~」
 「ど、どうしたの?梓ちゃんっ」

 わたしは憂にすがるようにしゃがみ込んだ。

 「お姉ちゃんに用があったの?」
 「え…あぁ…うん」
 「そっか、ちょっとまってね、お姉ちゃん、なんだかお部屋に閉じこもったきりで出て来なくなっちゃってて…、あ、ココじゃアレだし。上がってよ」

 憂のご好意により、わたしは無事に平沢家の敷居を跨ぐ事が出来た。…もぅ何やってるんだかわたし…。
 憂はコンビニに行っていたのか、袋の中の物を冷凍庫に入れると、すぐにお茶を出してくれて、それから二階へと上がって行った。…相変わらず両親不在の平沢家。
 取りあえず、走って来たから喉がカラカラで憂が出してくれた、良く冷えた麦茶をありがたく飲み干してみた。

 「梓ちゃん、ごめんねー、お姉ちゃんお部屋から出たくないって…もうどうしたんだろう、あんな事今までに一度もなかったのに」
 「…ねぇ、憂、わたしが唯センパイの部屋にあがっちゃ駄目かな?」
 「え?…うーん。…じゃぁ…そうしてもらえる?」
 「うん」

 わたしはお茶のお礼を憂に伝えて唯センパイの部屋に向かった。
 階段一つ一つ、足を伸ばすたびに色々と振り返ってみる。その一つ一つ、どれをとっても素敵で、大切で失いたくない思い出。そして、その中にはいつも必ず唯センパイの笑顔が隣にあった。
 階段を上り切ると、わたしは扉の前で深呼吸をして、それからトントンと控えめに扉を叩いた。

 「唯センパイ…梓です。入ります」
 
 返事は聞こえなかったけど、わたしはゆっくりと扉を開けて部屋に入る。真っ暗だったので、電気をつけますと断りを入れると頑に拒まれた。

 「今はだめ。…だってわたし、いっぱい泣いちゃったから凄い顔してるし」
 「…そんなの、見慣れてます」
 「ち、ちがうもん、いつものと違うもん、ずーっとずーっと泣いちゃったから…」

 ベットの上にぼんやりと影が映るのが唯センパイ。わたしはそこを目指してゆっくりと歩いた。

 「あ、あずにゃん、来ちゃだめだよぉ」
 「イヤです」

 わたしは嫌がるセンパイを無視して前に進む。なんとなく目が暗がりに慣れて来た時、

 「にゃっ!!」
 
 何かにつまずいて、わたしはそのままベットの方にダイブして、そのままゴチンとセンパイの頭と自分の頭をぶつけてしまった。

 「イタタタ…」
 「いたいよぉーあずにゃーん…いたいよぉー…ひっく…いた…っく」
 
 背負って来たムスタングの悲鳴がドコカで聞こえた気がした。ムッタン…ごめん…。心の中でさっきのショックで放り出されてしまったギターにお詫びをしながらわたしは、自分の下で痛がりながら泣いている一つ年上のこのひとをじっと見つめた。

 「酷いよあずにゃーん…落ち込んでるのに、こんな事までするんだもん」
 「ち、違いますっわざとじゃないですっ!!だいたいあんな所につまずく様なもの置いてるセンパイが悪いんですっ」

 ガバッと起き上がると、そこには顔を覆って泣いている唯センパイの姿があった。

 「ち、違うんです…こんな事言いに来たんじゃないんです…」
 
 唯センパイはわたしの言葉に顔を覆っていた腕をよけた。

 「わ、わたし…」
 
 唯センパイをチラッとみるとじっとわたしの様子をうかがっているのが見えて、途端に恥ずかしくなる。

 「あ、あんまり見ないでください」
 「やだ」
 「うぅ…」

 仕方がないのでわたしは思い切って唯センパイの上にかぶさってみた。

 「うぉっあ、あずにゃん!?」
 「……/////」

 ドキドキする…自分の中の気持ちを言葉にするだけなのに、こんなにドキドキするなんて。唯センパイがとてつもなく柔らかくて、気持ちよくて…体がかーっと熱くなってどうしようもなくなる。めまいがしてどうになってしまいそう…。
 
 「あずにゃん、…へへ、熱いねぇ」
 「す、すいません…」
 「うーうん、気持ちいいからいいよぉ」

 唯センパイの腕がわたしの背中の上で泳いでいるのが何となくわかったので、腕を背中に回してもいいと言うと嬉しそうにわたしの背中に腕を降ろしてギュッと力を込めた。
 今ならなぜかわかる。こうやってセンパイにギュッとしてもらう事がどうしてこんなにも安心してしまうのかが。

 「わたし…その、気がつかなくて…自分の気持ちに……、で…えと……」
 「あのねーあずにゃん」
 「は、はい」

 あともう一息と言う所でまた間を外されてしまった。

 「あずにゃんが言おうとしてる事、なんかわかっちゃった」
 「え、と…な…なんで」
 「だってね、わたしエスパーだからっ フンスッ」
 
 えーーーーーなにそれーーーー。まったく…人が一世一代の大告白をしようとしている時に、こんな変なこと言い始めるんだから…。唯センパイは本当にもぉ…。

 「でも、やっぱ、最後まで聞きたい」
 「いやです。だめです。もういいません」
 「えぇーーーーあーずにゃーーーん」
 「そんな、デリカシーにかけるとか空気が読めない人知りません」

 わたしは恥ずかしくなってそっぽ向いた。だって、この状況から告白まで持って行けるスキルなんて今のわたしには備わっていません。

 「ぅう…。ん?あずにゃん、今日は髪型違うね…えへへ、キレーな髪だなぁー。なんかいい匂いするし」
 「ちょ、は、恥ずかしいから匂いとかヤメてください」
 「なんでー?」
 「はぁ…もぅ…。汗いっぱいかきましたから…また帰ってお風呂入らなくちゃ」
 「そっかー、次来る時は泊まりにおいでよぉ」
 「ちょ、なんでそんな話になるんですか?」

 わたしは再び唯センパイの方に振り返ると、センパイはにっこりと笑って、もう一度言った。

 「わたしはあずにゃんが大好きだよーあずにゃんとずっと一緒にいたいなぁ」
 「……わた…しも…です」
 「わはぁー♪ありがとう!あずにゃーんっ」
 
 わたしを抱きしめたままゴロゴロとベットを転がる唯センパイ。いつもなら嫌がるけど、まぁ今日は許します。…てか、なんかわたしの告白かっこわるい…。

 「じゃあずにゃん」
 「はい?」
 「ちゅーーーー」
 「ひっ…」

 あ、あれ?いつかのデジャビュ…でもないか。

 「と、特別ですよ?」

 わたしはゆっくりと目をつむって小さくてやわらかな、その唇に口づけをした。



 おわり


 さー次は澪×律だぁ!!www  
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プロフィール

弥家比奈

Author:弥家比奈
2006/10/26/Start
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(びけ ひな)
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